Novel2

□小さな恋
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もしも。もしもの話をしようか。
もし、俺とシズちゃんが初めて出会ったあの時。
交わしたものが、喧嘩ではなく言葉だったのなら、掌だったのなら、笑顔だったのなら。
俺たちは今、どうなっていたんだろうね。



「今日ドタチンいないの、つまんない」

昼休み始まって早々、臨也はそろった面子を見て声をあげた。
いつもの昼休み、屋上には臨也を含め3人しかいない。いつもはもう一人、背が高く優しい彼がいる。
と、門田と同じクラスの新羅が口を開いた。

「門田君は今頃先生に引っ張りまわされてるよ。臨也と違っていい子だから」

「何それ」

新羅の尤もだと言いたげな声に顔をしかめて見せた。
そんな幼くすら見える二人の間で、我関せずとでも言いたげな静雄は焼きそばパンを口に運ぶ。
勿論、静雄が進んでこの会話に入る理由も無いだろうと分かっているから、臨也も下手に感化しようと思わない。

「大体、シズちゃんと新羅がいても何も楽しく無いじゃん」

「酷いな、臨也は。そこまで否定することないのに」

さしてショックを受けた風でもない新羅に溜め息をつきつつ、臨也は念を押すように再び口を開いた。

「ドタチンがいないとつまらないよ。ドタチンがいるから4人でご飯食べているっていうのに」

唇を尖らせて言った臨也を、新羅は面白そうに笑う。
合間に何か言いたげな目線hを新羅が静雄に送れば、静雄は関わりを避けるようにそっぽを向いた。

「それは僕や静雄君に失礼じゃない?」

「いいよそんなの。俺には関係ない」

「関係なくないよ。ねぇ、静雄君」

まるで詰るかのように唐突に言った新羅に、振られた静雄は肩を跳ねさせた。
そんな静雄から目を逸らすと、臨也は弁当の卵焼きを口に運ぶ。
静雄が怒ると面倒臭い。このタイミングなら新羅に怒ってくれればいいのに、大抵臨也に矛先が向くのだ。
――ほら、やっぱり。

「手前が騒いでるだけでイライラするんだよ」

「冒涜だねそれは」

「ああ!?」

静雄の手中のパンの袋がクシャリと音を立てる。パンが潰れるだろうと思っていたけれど。

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