Novel2
□※風邪ひきと寂しがり
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目が覚めた。
いつ寝たか記憶がなく、セックスの途中で寝てしまったのだとガンガンとする頭に思う。
ただ、セックスで病状が悪化しているのは明確だった。
…けれど、今自分はきちんとパジャマを着ているし、身体に違和感はひとつも残っていない。難を言えば腰が痺れているくらいか。
「起きたのか」
ふと耳に届いた声に顔を向ければ、水の入った桶を持つ静雄の姿があった。
静雄は臨也の隣に座ると、タオルを濡らして臨也の額に乗せる。ひやりとした温度が気持ちいい。
「…悪かったな、風邪引いてるのに」
不意に漏らされた遠慮がちな声に、臨也は目を丸くした。
全く。そんな風に思うくらいなら、始めから来なきゃ良かっただろうに。
…けれど、きっとそれでは俺が寂しかった。
「じゃあ冷えピタ欲しいなー」
「…面倒臭ぇ」
「はぁ?ケチ」
不満を漏らしながらも、髪を掬う静雄の手を握り締めた。驚いたような静雄の顔を笑いながら、寝るからね、と呟いて瞼を閉ざす。
静雄は臨也の手を払い除けない。きっと次に目を覚ますまで、このままなのだろう。
やっぱり優しいのだか面倒臭がりなのだか分からないな、と思いながら、溶けていく意識のまま微笑んだ。
こんな日も悪くないかな、なんて思いながら。
END