Novel2

□通り過ぎた
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ああ、イライラする。
どうしてこんな奴に、感情を左右されなきゃいけないんだ。
待ちに待った昼休みも、邪魔されなきゃならないんだ。
…どうして、俺は――



「今日ドタチン居ないの、つまんない」

臨也の声に、今日の昼休みは始まった。

「門田君は今頃先生に引っ張り回されてるよ。臨也と違っていい子だから」

「何それ」

不機嫌にむくれる臨也にそう言った新羅。
静雄はその間で、買ってきた焼そばパンを口に運ぶ。

臨也はいつもこうだ。
門田がどうのこうの、煩いと言ったらありゃしない。
飯ぐらい黙って食え、と言いたいところだけれど、ここで黙り込んでしまう自分がいる。
俺だって理解しているのだ。
門田が、喧嘩に強いわりに優しいことも、誰よりも他人の気持ちを察してやることが出来ることも。

――そして、門田は臨也と付き合っていることも。

だったら惚気るのも、居なくて残念だと思うのも、仕方のないことだと思う。
自分だって、好きな奴と付き合えばところ構わず触れていたいし、惚気てみたくもなる。
だから、臨也を制することは出来ないとは思う。
それに、臨也に注意でもすれば、妬ましいね、だとか馬鹿にされて、更に苛立ちかねない。

「ドタチンがいないとつまらないよ。ドタチンがいるから4人でご飯食べてるっていうのに」

唇を尖らせる臨也を、新羅は面白そうに笑う。
その合間、新羅からちらりと向けられる視線に、静雄はそっぽを向いた。
察しが良い奴は、こういう時質が悪い。

「それは僕や静雄君に失礼じゃない?」

「いいよそんなの。俺には関係ない」

「関係なくないよ。ねえ、静雄君」

唐突に振られ、静雄は肩を跳ねさせた。
臨也を見れば、此方になど興味がないというのを露骨に滲ませて卵焼きを口に運んでいる。

「手前が騒いでるだけで苛々するんだよ」

「冒涜だねそれは」

「ああ!?」

思わず、手中のパンを握り潰す勢いで臨也を睨み見たのだけれど。

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