Novel2

□※罪人は愛を乞い、断罪人は愛を殺す。
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「あ、んん…っ、ふぁ、は…っ」

粘膜を擦りあげながら体内を蹂躙する静雄の熱に、臨也は甘く喘ぐ。
その間も、頭だけは嫌に冷静で。

『手前に愛されるなんて吐き気がするんだよ。嫌われてる方がよっぽどマシだ』
どんなに愛しても、どんなに鳴いても、どんなに見つめても、この距離は縮まらない。
…だったらいっそのこと、嫌いになってしまうことが出来れば。
こんな行為なんてしたくないほど。静雄に会う理由が無くなるほど。
…そうすれば。

「し、ずちゃん…っ」

「…あ?」

「しずちゃん、なんか、…っふ、きらい…、っあ…
だいっきらい…!」

…そうすれば、シズちゃんに愛してもらえるのかな。
シズちゃんに愛されたい俺がいなければ、もう少しくらい好きになってもらえるのかな。

「っ、ひあ…!きらい!ばかぁ…っ、だいきらい…っふあ!はぁあ!」

「――嘘つきだな」

静雄が容赦なく腰を抉る。けれど、途切れそうな意識の中、ひたすらに叫んだ。
涙が止まらなかった。
喉が、頭が、胸が、痛かった。
嫌いになれるはずが無いくせに。嘲笑した奴は、俺だった。



だいきらい。
臨也の口から、数えられないくらいに聞いたことがあった気がしたけれど、過去を顧みれば、片手で足りるほどしか放たれたことがなかった。
果てたと同時に気を失った臨也は、隣で静かに寝息を立てている。
頬には、涙の軌跡がはっきりと残っていた。枕はしっとりと湿っている。
その寝顔を見ながら、静雄は溜め息を吐いて胸に手を添えた。

キリキリ。痛い。
だいきらい。泣き叫ぶ瞳の熱は、脳裏に焼き付いて剥がれようとしない。まるで、百年先も苦しめてやると嘆くように。

臨也の髪に触れる。静雄の無骨な指を、艶やかな髪が包んだ。ゆっくりと撫でれば、臨也は小さく身じろぐ。


「愛してる――」


囁いた声は、臨也の耳に届かぬまま虚空に消える。静寂に残るのは、臨也の穏やかな寝息だけ。

大嫌いでいい。赦されなくても構わない。
けれど。

どうか、このまま愛していてくれ。





END
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