Novel2

□※罪人は愛を乞い、断罪人は愛を殺す。
2ページ/4ページ


それでも、殺し合いにも似た喧嘩は、今日も続く。

「臨也ああああ!!」

「煩いな、シズちゃんは」

早く殺してくれればいいのに。
そう思うのに反して、足は前へ前へ走り続ける。
痛いのは嫌だ。怖いのは嫌だ。そんな感情が先立って、臨也の足を進ませる。
殺されることが愛で、殺すことが愛なら、立ち止まれたかもしれないけれど。

「手前、待ちやがれ!!」

「シズちゃん、生憎俺は君ほど暇じゃないんでね!今から帰らなくちゃいけないって用があるの!」

「ふざけてんのか手前は!!」

ふざけてるよ。そうじゃなきゃ辛いから。

人気のない住宅街に入り込む。
そこで臨也は振り返ると、ナイフを振りかざした。すぐさま降り下ろすも、静雄が無理矢理に足にブレーキをかけたため、シャツを切り裂いただけになる。
しかし、静雄にとって大切な弟から貰ったものだ。彼の怒りを増幅させないわけがない。
余計に顔を歪めた静雄。
臨也はきゅうと唇を噛むと、笑みを浮かべて見せた。
軽い口調で、いつも通り馬鹿にしているかのように聞こえるように。

「いつもセックスしてるくせに、酷いなぁ、シズちゃんは…
俺はこんなにも愛してあげてるのに」

臨也の精一杯の強がりだった。
彼の気持ちを彼に悟られずに探る、ずっと使おうか躊躇ってきた手段。
臨也の言葉に、静雄は目を細めた。まるで背筋が凍るような、まるで全てを見透かしているような瞳に、臨也の足は竦む。
静雄は言った。冷徹な声で、まるで臨也を突き落とすかのように。

「俺はしたいからしてるだけだ。手前がどうだろうと知ったことじゃねぇ。
それに――
手前に愛されるなんて吐き気がするんだよ。嫌われてる方がよっぽどマシだ」

見透かされる感情。突き放す言葉。蔑んだような瞳。
その何れもが、臨也に突き刺さる。
笑えなかった。頬が固まって、動くということを拒否する。
分かりきっていたことだったのに。今更はっきり言われても、傷付いたりしないはずだったのに。

涙が滲みそうになる。
けれど唇を噛み締めてそれを押し込むと、動くことを拒否する頬を無理矢理つり上げた。

「まぁ、嘘だけどね。
でも別にそんなのどうでもいいや。エッチしたくなったからしよ」

「…俺の家で、か?」

「シズちゃんが今すぐしたいならここでも構わないよ?」

「…そんな趣味はねぇ」

顔をしかめた静雄に、臨也は微笑んで見せた。
吐き気がしそうだった。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ