Novel2
□君が欲しいもの
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「もう日付変わるね。帰るよ俺」
身体を交えてたった30分ほど。
臨也はシャワーを浴びて髪を乾かすのも早々に引き上げ、ジャケットを羽織った。
時計を見れば23時過ぎ。いつからこんな律儀な奴になったんだか、と思いながらも、そうか、と返した。
「あー、腰痛い」
伸びをしながら言った臨也に、静雄は躊躇いながらも口を開く。
「だったらもう少し休んでいけば良いだろ」
そうすれば、臨也は意外そうに目を丸くした。けれどすぐにそれを笑みに変えて、静雄に背を向ける。
「駄目だよ。喧嘩相手にそんな優しくしちゃ。抱いたら情でもわいたの?」
僅かに震えたように聞こえた気がした聞き慣れた声。
気のせいだと思うも、何だか引っかかって。
情だってわくだろう。好きな相手と繋がって、何も思わずにいられるはずがない。
――けれど、こうして行為に及んだからこそ言いづらくなることもあるのだと、初めて知った。
無言でその細い背中を見つめていれば、臨也は振り返る。先刻までと寸分違わぬ顔で、声で。
「明日は、シズちゃんにプレゼントあげるね」
「プレゼント?」
「そう。楽しみにしててよ」
嫌に明るい声で言った臨也に、思わず静雄は顔をしかめた。
手前がくれるプレゼントとか、嫌な予感しかしねぇ。そう言えば臨也は、酷いな、と静雄に笑いかけると再び踵を返した。
玄関に向かって歩き出した臨也に何も言えないままそれを眺めていれば、臨也はひらりと手を振る。
「本当に喜ぶよ、絶対。楽しみにしてて」
その声が切れてすぐに、玄関の扉の閉まる音が響いた。
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