Novel2
□全てを照らす太陽に、月は動揺するようで。
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不意に腕が引っ張られた。驚きながらも、何かしてくるのなら直ぐに反撃が出来るようにナイフを手に持つ。
けれど、臨也は動けなくなった。
「…ん……?」
理解が出来なかった。
止まった呼吸。ほの暗くなった視界には、いっぱいに静雄の顔が映る。
えっと。
これは、キ、ス?
唇を塞ぐ静雄の唇が離れ、静雄の挑戦的な顔がゆっくりと離れていく。
ぽかんとしたままの臨也に、静雄は得意気に笑いかけた。丁度、先刻の臨也のように。
「何も出来ねぇのが癪だったからよ…手前もこれなら驚くだろ?」
「…っ、は!?」
恥ずかしげもなく言った静雄は、動けないでいる臨也を至極楽しそうに見つめる。
…何なんだこいつは。
太陽なら動くなよ。勝手にキスなんかするなよ。
ふざけるな。ふざけるな。
「?、臨也?」
「太陽は恒星だから、公転する惑星に近づくな!!」
「は…?」
きょとんとした静雄を置いて、臨也は逃げるように路地裏を抜けた。
馬鹿だ。そんな理由でキスするなんて馬鹿。でも、混乱している自分も余程の馬鹿だ。
「何だよ、公転とか…」
自分のどうしようもない失言に、沸点を通り越して身体が熱い。そう、自分の言葉に恥ずかしさを覚えているわけで、キスなんかは関係ないんだ。
だから、早く。
早く静まれよ、心臓…っ
(シズちゃんなんかに照らされて
この酷く面倒な感情の存在を知ることになるなんて!)
END