Novel2

□※愛惜
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「しずちゃ、あン!だめ、いっちゃ、う、っ」

滑舌すら曖昧な声が甘く啼く。
あの時は、こんなこと簡単に出来るものか、と思っていたけれど、所詮本能を持つ人間だ。許された性欲なら理性が払われるのは早く、臨也に誘導されるがままに互いの身体を貪り合うだけになる。
勿論、臨也がこんなに艶かしい声を出せることも、こんな官能的な表情を出来ることも知らなかった。けれど、恋愛感情などなくとも簡単に勃つということを知った。

瞬きの度に震える睫毛は、生理的なものだろう涙を乗せて、静雄の情欲をそそる。
その肋が浮くほどに細い身体に乗る小振りで柔らかな胸に手を這わせながら、静雄は限界を訴える臨也の奥に、同じく限界の自身を突き上げた。
熱く柔らかい内壁は、ぎゅうと静雄を締め付けて。

「ひっ、ぁああっ」

「ッ…ふ、」

びくびくと震えた臨也の中で、静雄も果てた。



「風呂空いたぞ」

「どうも」

風呂を上がり、入れ替わりに臨也に勧めて一人になった部屋で、静雄はベッドに身体を投げ出した。
今更ながら、本当に良かったのかと思えてくる。コンドームは付けていたけれど、だから子供は出来ないと割り切って性行為に及んでもいいものなのか。
…けれど、もうしてしまった。臨也は後腐れなくできそうだと言ってはいたが、そんな単純なものではない。事に及んだことは、もし臨也に忘れろと言われても消えない事実だ。
その分、自分は臨也に普段通りに接しなければいけない。それが自分の出来ることだと思う。
静雄は深く溜め息をついて、枕に顔を埋める。身体に残る疲れはすぐに睡魔を連れてきて、意識は気づかぬうちに途切れていた。


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