Novel2

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「折原、」

欲望に上擦る男の声が囁く。
臨也は閉ざした瞼を開かないまま、男の首にしなやかな腕を絡めた。
ずくん、ずくん、下腹が卑しく疼き、臨也は自身の内部を蹂躙する淫猥な形をきゅうと締め付ける。

「もっと、頂戴、先生…、っあ!」

「折原は淫乱だな…そんなに欲しいなら好きなだけくれてやるよ…」

途端に始まったピストンに、臨也は既に擦りきれた嬌声を喉から絞り出した。


こんな風に身体を取引に使うようになったのは、ほんの数ヵ月前。発端は、今まさに性交をしているこの教師だった。
その当時この仕事に手を出し始めたばかりだった俺は、自分に甘い教師に情報の提供を持ちかけ――
そして、取引の対価として欲されたのが、自らの身体だった。
勿論迷いもした。世間体的に、その事実が露呈すれば被害を被るのは俺は勿論教師も、そしてこの学園にもそれなりのレッテルを貼られるわけだ。それに、こんな男と身体を重ねるなど吐き気がする。
――否、こんなのは形的な拒否にすぎない。本当の理由は、隠したいだけ。知らないふりをしたかっただけ。

シズちゃんが好きだった。
叶うはずもないと知りながら、愛しくてたまらなかった。

でも、俺はその取引を受け入れた。
こうすることで、もう無理だ、と諦めがつくかもしれない。そう思って。

…でも、無理だった。
初めての行為で静雄を思い出してしまった挙句、付き合ってすらいないのに罪悪まで覚える始末。
そのくせ懲りずに、この教師をはじめ他の取引相手の数人とも身体の関係をもつようになった。
つくづく、救えない。


「っ、あ!はぁ、ん…っひゃ!
も、イクっ、あっ、せんせぇ…っ」

「先生の分は、しっかり呑めよ…!」

ぐい、と押し込まれた腰。奥深くまで貫いた男の魔羅は臨也の内壁を押し広げ膨れたかと思えば、溶かされるような熱が注がれる。
その感覚に押し流され、腰に蟠っていた欲望が臨也のものからも吐き出された。
金切り声をあげ快楽に意識が飛びそうな最中、臨也は閉ざした瞼の裏に浮かぶ、あるはずのない彼の名を、誰にも聞こえないように吐息で囁いた。



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