Novel2

□※恋人の憂鬱
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「次、いつ会える?」

静雄からの問いかけに、臨也はちらりと静雄を見上げる。
どんな答えを望んでる?どんな答えなら正しい?いつなら会えると言って良い?

「いつ会いたい?」

「――暇なとき」

…それは、暇潰しに、ってこと?それだけ会っていれば充分ってこと?
――俺は、毎日だって会いたいのに。


「…なんで?」

臨也の震えた声に、静雄は何事かと臨也を見やる。
そこには、眉間に皺を寄せて静雄を睨む臨也の姿があった。

「俺と会うのはそれだけで充分?それとも、これ以上会いたくない?」

「は?何言って」

「だって!!シズちゃんの連絡、一ヶ月ぶりなんだよ、分かってる!?
会ったら会ったでセックスしかしないし、じゃあセックス出来れば誰でもいいんじゃないの!?
好きって言えば隣にいるとか、そんなの思い込みだろ、俺はシズちゃんのペットじゃないんだから…!」

気が向いたときだけ構われて、それ以外は飼い殺しも同然で。
別にプラトニックな恋愛を望んでいるわけではない。
もっと普通の恋愛がしたかった。自分ごときが何を偉そうに一般人ぶって、そう思う自分も確かに存在している。
…でも、こればかりは俺はどうにも出来ないよ。
人間というものに向ける愛情とは違いすぎて、胸を苦しませすぎて。
切なくて、痛くて、愛おしくて――

「、臨也」

「俺は…

シズちゃんに傍にいて欲しくてたまらないのに…っ」

それだけで良いのに。
一ヶ月に一度なんかやだ。セックスしかしない恋愛関係なんかやだ。

ベッドから抜け出し着替えを持つと、引き止めようとする静雄の声を背に浴びながら臨也は下着しか身に付けないまま脱衣室に走った。
追ってきて扉を開けようとした静雄へ、開けるな、と怒鳴れば、扉はぴたりと止まる。
どきん、どきん、と胸が激しく高鳴る。
扉一枚隔てただけのすぐそこにいる彼の表情。声。気になるのに、見たくない。
扉に背中を付ければ高鳴りは一層激しくなって、服を抱えたままずるずると床にしゃがみこんだ。

「…シズちゃんが何の用があるの」

「…開ける気がねぇならそのまま聞け」

静かな声で言われ、臨也は言葉を返せないまま下唇を噛み締める。
何を言われるのだろう。我が儘だな、と罵られるのだろうか?確かに好きじゃない、と肯定されるのだろうか?それとも――否、妄想も大概愚かしい。

扉を挟んで隣り合わせ。臨也は小さく息を飲んだ。


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