Novel2

□※恋人の憂鬱
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付き合うってなんだっけ。

ふと、そんなことを思う。
思春期の学生ならまだしも、自分はもう二十歳も疾うに過ぎた女子高生の言うオッサンだというのに。
…仕方無いのだ。仕方無いと思って欲しい。
全部全部、あいつのせいだ。



熱っぽい吐息が零れる。部屋は熱くもないのに身体は芯から火照って、頭は思考を巡らすのを拒む。
呼吸すらままならないまま、臨也は目の前の赤らんだ顔をぼんやりと見つめる。

「な、んだよ…」

「何も、な…っあ、ひっ…やあ!」

彼の限界の近い肉棒が、激しい律動とともに臨也の深くを突き上げた。
従順に震える身体はどうしようもなく自らの羞恥を煽る。
先刻中で出されたせいでじっとりと濡れた内壁は静雄に絡み付き、とろとろと隙間から零れていく。

「あっ、やぁっ、いく…っ」

裏返る甘い声を惜し気もなくあげ、静雄のシャツにしがみついた。
ギリギリまで引き抜かれたかと思えば、一気に沈められた腰は前立腺を擦りあげ、臨也を奥まで貫く。
びくん、と身体が跳ねる。込み上げてくる感覚に、詰まる息に対して喉からは声が絞り出された。

「っぁああ…!」

「っ…」

白い喉を晒して絶頂を超えた臨也の熱く熟れた場所に、白濁が吐き出された。
二人で荒い息を繰り返しながら事後の甘い余韻に包まれて、静雄は自身を引き抜き臨也にしなだれかかる。
熱っぽい瞳で静雄を見つめれば、その頬に色めいた笑みが浮かんだ。
ひたすらに妖艶な薄い唇が、ゆっくりと言葉を紡ぎ出す。


「…好きだ」


――微笑み返す臨也の耳には、寒々しく聞き慣らされるその言葉。
勿論、彼が演技派だとは思っていないし、何より嘘を吐くのが下手だ。
…分かっている。なのに、その言葉は心の底から奏でられた音なのか――不安でたまらない。

前に二人きりで会ったの、いつだっけ。
思わずそう問い掛けたくなる。
答えは、一ヶ月前。
確かその日も、今日のように身体を重ねた。
そして、連絡をしたのも一ヶ月前。

池袋で会うには会うし、此方から連絡すればきちんと反応をくれる。
…だから、駄目なのだ。
電話をするのは俺からばかり。家に行っても良いかと尋ねるのは俺ばかり。
…シズちゃんは、俺を愛してくれているのだろうか。そんな不安が胸を過る。
好きだからこその不安だったら良かったのに、俺がアクションを起こさないと時々しか彼から誘ってくれないから。
…でも、静雄から誘って欲しくて。一方通行だと思いたくなくて。

――どちらかと言えば、そんな意地が自分の首を絞めているのだけれど。



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