Novel2

□エニグマ
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「自惚れも大概にしなよ。
どうして俺がシズちゃんに愛されなきゃいけないのさ。
俺は、シズちゃんなんか」

ダイキライ。

「だいきらい…なんだから」

絞り出した声。震えなかったことは、自分を誉めてあげたい。
――静雄は、僅かに眉をしかめたものの、次には臨也を伺うように表情を変えた。

「手前…それならなんで、そんな顔してるんだよ…」

「…え?」

そんな顔?
否、ちゃんと嘲笑してる。ひきつってもいない。
どうして…?

下唇が震えた。
顔があげられなくなって、次は何処まで見透かされるのか怖くて、思わず俯く。
沈黙が流れたものの、黙り込んだ臨也は話さないと踏んだのか、静雄は口を開いた。

「あと、手前が言ったことで一つ間違ってたから、訂正しろ」

一つだけ間違っていたこと。
動揺しながらも、臨也は高鳴る胸を静めようと深呼吸をしながら、静雄に耳を傾けた。


「俺は、手前は嫌いじゃねぇ。

――好きなんだよ。」


分かったか、ノミ蟲。そう付け足された言葉に、臨也は言葉を咀嚼し、ゆっくりと、顔を上げた。

「す、き?」

「〜ッ、そう言ってるだろ!
だから、手前が愛してやるって言ってきたとき、嬉しくなかったわけじゃなかったんだよ!
でも、嫌われてると思われたまま付き合いたくねぇから、だから何も分かってねぇって…!」

胸の高鳴りが音を変えた。
優しい緊張だ。苦しくて、痛くて、でも優しい鼓動。

「紛らわしい、んだよ、シズちゃん…」

作っていたはずの嘲笑は崩れて歪んだ。
涙と共に溢れたのは堪えきれない微笑みで。


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