Novel2

□エニグマ
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その3日後、臨也は池袋へ来ていた。
――勿論、毎度のように静雄に追いかけられているのだけれど。

「手前、待ちやがれ!!」

「嫌だよ!シズちゃんのために待ってあげるなんて、するわけないだろ!」

いつもと変わらない。
そのことに安堵と共に胸に芽吹くのは、僅かな切なさ。
馬鹿らしい。何をどうしても伝わらないだろうに、感情だけは込み上げるのだ。

びゅん、と風斬り音を響かせて臨也に飛んできたコンビニのゴミ箱を避け、角を曲がった。
走って、走って。まだ走って。
…今日はしつこい。昨日のことをまだ根に持っているのだろうか、…辛い。

裏路地に出ると、臨也は距離をとったまま振り返った。同じように、静雄も足を止めて向き合う。

「シズちゃんさぁ…しつこいよ?なんなの、今日は」

「…この前のことだ」

語調の強い声で言われ、直ぐに何のことか察しがついた。
不意に高鳴りだした胸を悟られないように、冷笑を取り繕う。
静雄はじっと臨也を見詰めながら口を開いた。


「手前は、俺のことが好きなのか?」


…え?
静雄の言葉に、息が止まった。瞬きすら出来なくなる。
待って。なんで。どうして。
肯定も否定も出来ないまま、臨也は静雄を見た。

「確かに、手前が俺に言ってきやがったことは、大体合ってた。
でもよぉ、手前が俺を嫌いとは、一言も言ってなかったよな?愛してやらねぇ、とは言ってたけど。」

ドキリ、とした。無意識と言うのは恐ろしい。
この前自分が言い当てていったように、静雄に見透かされている。
どうしよう。
気持ち悪い、と言われたら。近寄るな、と言われたら。

「愛されたいのは、手前なんじゃ」


「馬鹿じゃないの!?」


静雄の声を遮った。
しかめられた眉に胸を締め付けられながら、臨也は嘲笑を浮かべて見せる。
怖い。全て見透かされている。怖い…。


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