Novel2

□イタズラ。
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緩く握れば、ぴく、と指先が震えて、思わず緩める。
それで臨也は起きたのだろう、ゆっくりと開いた紅い瞳が、静雄を見上げた。
数度瞬きをして、寝惚けたままその頬を緩める。

「どうしたのぉ、シズちゃん」

間延びした声は、いつも聞いている鬱陶しいそれとは違い、何処か落ち着かない。

ふと、まだ手首を握ったままだと言うことに気がついた。
急いで離せば、臨也もその時に気がついたのか、自身の手首を見つめる。
そして、不満そうに口を開いた。

「まだ握ったままでもいいのに…」

静雄は思わず目を丸くする。
寝惚けてる。完全に。
どれだけ熟睡してるんだ、人の席で。

「とりあえず、早く立て。俺の席だ」

そう言えば、臨也は面倒臭そうに唇を尖らせた。

「シズちゃんが遅いから寝ちゃったんだよ?
悪戯しようと思ってシズちゃんの席に居たのに、寝ちゃっただろ、ばか」

寝惚けてるくせに達者な口を縫い付けてやりたい。
そんなことを思いながら、静雄は溜まった鬱憤をその元凶へ吐き出す。

「手前が不良とかヤクザとか呼ぶから遅くなるんだろ、馬鹿は手前だ」

その言葉に、臨也は眉をひそめる。
整った顔を歪ませて、臨也は子供のような口振りで言った。
しかも、何処か恥ずかしそうに。

「だって、それは、
シズちゃんに変なのが寄り付かないように…」

そう紡ぐ臨也の顔は、徐々に赤くなっていく。
ぽかんとしている静雄に構わず、臨也は俯いて続けた。

「ドタチンも新羅も、友達だよ?
…だけど、もし、シズちゃんが喋ってるうちに仲良くなって、二人がシズちゃんのこと好きって言ったら、やだ…」

――それは、聞きようによっては嫉妬で。

所謂、俺に喧嘩を仕掛けていた理由は、門田や新羅と絡む時間を減らすため、らしい。


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