Novel2

□ひとりじめ
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「俺帰るから、シズちゃんじゃあね、今日見たことは忘れてよ」

考え込んでいれば、臨也が唐突に言って、歩き去ろうとする。

…気がつけば、その腕を掴んでいた。
びくりと肩を跳ねさせた臨也は振り返る。

…何で掴んだんだ。
引き留めて、何を話すつもりだったんだ。

「…なに?」

警戒したような視線が、静雄をちらりと見やる。
しかし赤く染まった頬が、全ての威勢を頼りなくしているのは一目瞭然。

静雄は思わず、ふと思いついた言葉を口にした。


「駅まで送ってってやる」


「…え」

臨也は目を丸くした。
言ってから静雄は、焦りながら思い付く限りの言い訳をする。

「だって、手前…っ、ナンパされるくせに一人で歩いてたらあぶねぇだろ、見た目考えろ!」

言ってからハッとした。
まるで、臨也の女装を褒めているみたいじゃないか。
焦りつつ臨也を見れば…やっぱり、頬を真っ赤に染めてぽかんとしていた。
…実際のところ強ち間違ってはいないのだが、静雄は思わず口を開く。

「別に、手前の女装がどうとかじゃなくて!」

「分かってるッ」

臨也は僅かに震えた声で恥ずかしそうに言い、そのまま歩き出した。
どうすればいいのかと臨也の背を慌てつつ見れば、臨也は仄かに染まった頬で眉をつり上げて振り返る。

「シズちゃんがっ…送ってくれるんでしょ!?」

「お、おう」

そのまま歩き去られると思っていたのに。
再び歩き出した臨也に追い付いた静雄は、隣を歩き出した。



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