Novel2

□ひとりじめ
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「……臨也?」

思わず問いかける。
すると、まるで、図星とでも言うように女子高生らしき人の肩が跳ねた。
女子高生…臨也は、気まずく逸らした視線を更にあさっての方向へ向ける。

「し、シズちゃんには関係無いだろ馬鹿!」

関係は無い。けれど。

「手前、そんな趣味があったのか…?」

「無い!!」

静雄を睨み付けた臨也と目が合った。
しかし直ぐに、恥ずかしそうに俯いてしまう。

男が女装、しかも20歳を過ぎた大人が女子高生。
性別的にも年齢的にも普通は無理があるだろう。
なのに、不思議なくらい自然過ぎる。
化粧をしてカツラを被って、パットでも詰めて胸を作っているせいもあるのだろうが、
元が綺麗な顔立ちのせいで、大人びた高校生にしか見えない。

まじまじと見ていれば、臨也は化粧をした顔を見られるのが恥ずかしいのか、眉をしかめながら静雄を上目気味に見上げた。

「俺の趣味じゃなくて、仕事の関係上で着なきゃいけなかっただけで、俺が進んで着たんじゃないの!」

必死に弁解する姿は何処か可愛らしい。
…否、ノミ蟲相手に可愛いって何だ、可愛いって…。

自身への動揺で眉をしかめる静雄を、臨也は自分の女装に嫌悪を抱かれている、ととったらしい。
しかし女装してスカートの状態で暴れるのも宜しくない。
寧ろ世間体的に、公共の場で男なんて知られようものなら堪ったもんじゃない。

恥ずかしさに負けそうになりながらも静雄に変な顔をされるのは堪えられないらしい臨也は、
ナイフを振り回す代わりに静雄の胸板を弱く叩いた。

「制服は部下の学生時代のやつ、化粧もそいつにしてもらっただけ。
だから俺がしたんじゃないから、勘違いしないでよっ」

女装をしているせいか、相手がノミ蟲だと言うのに手を上げる気になれない。
それどころか、愛らしくすら見えるのだ。
…だから、これは女装をしているからであって。
断じて、ノミ蟲が可愛いんじゃない。



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