Novel2

□(※)にゃんにゃん!
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「…は?」

思わず漏れた声に、新羅はにこにこしながら、言った言葉を復唱する。

「だから、臨也に猫耳と尻尾が生えたから、触ったらどんな反応か確かめてくれない?」


今日、突然新羅に呼ばれた。
面倒臭くも、臨也を馬鹿に出来るネタがあるよ、と言われて、思わず興味本位で新羅の元へ訪れたのだけれど。

――そして言われたのが、今しがたの言葉である。
きょとんとしたままでいる静雄へ、新羅は笑みを崩さないまま語りだす。

「絶対に効くって確証は無かったんだけど、臨也で試したら効いちゃってさ。
ほら、動物って、耳とか尻尾とか触られると嫌がったりするだろ?
どんな感覚が原因で嫌がるのか実際のところを確かめたかったんだけど、触ろうとしたら解剖でもされると思ったのか逃げられちゃってさー。
だから、代わりに調べて僕に報告してくれるかい?効果は大体24時間しか無いから」

「…何してるんだよ」

「暇だったからさ」

暇だからすることでは無いだろう。
そう思ったが、興味がないかと言われたら否定できない。
折角だから馬鹿にしてやろうと、臨也の家のある新宿へ向かった。



ピンポン
ピンポンピンポンピンポン

「……」

何度チャイムを鳴らしても、臨也は一向に出てこない。
苛立って玄関先で奴の名前を怒鳴ってやれば、ようやくインターホンに沈んだ声の彼が出た。

『…何の用?今日は別に、池袋で何かしたりとかしてないんだけど。ていうか、近所迷惑だし、止めてよ』

「手前、猫になったんだろ」

溜め込んだ苛立ちで詳しく説明する気にならず、会話すら無視で単刀直入に言えば、インターホン越しの臨也は黙り込んだ。
僅かに間を置き、動揺を滲ませた声が紡がれる。

『…新羅に言われたの?』

「ああ、耳と尻尾触ってこいって」

『…シズちゃんも暇だね』

「…友達のよしみで聞いてやってるんだよ」

暇扱いするんじゃねぇ、と低く付け足せば、臨也は黙り込んでしまう。
このままインターホンを切られるのでは、と、引き留める声をかけようとした時だった。

『強く握ったりしない?』

僅かに心配そうに紡がれた声に、静雄は首を傾げる。
彼方からはモニターで見えているのだろう、臨也は再び口を開いた。

『耳にも尻尾にも、痛覚はあるんだからね、
絶対強く握らないなら、…許してあげる』

普段の高慢な態度とは似ても似つかないその声音に、意味も分からず胸が跳ねる。
遠い昔に味わったことがある感覚な気はするが、思い出せない。
握らねぇ。そう答えれば、扉がゆっくりと開けられた。



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