Novel2

□SweeT Valentine's Day
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臨也は、小さく溜め息を吐く。

2月も中旬にさしかかり3月まで一月もないというのに、
教室の窓から見える街並みには雪化粧が施され、今も尚空からちらちらと舞っている。
そのわりに、暖房の効いた教室は外の冷気など感じさせず、頭がぼんやりしてくるほどにぬくぬくと暖かい。

真面目に受ける気にならない授業に、臨也は教室の黒板の端に付けられたカレンダーを見た。
クラスの女子が落書きでもしたのだろう、14日にはハートマークと共に、バレンタイン、とマーカーでデコレーションしてある。
それを見て、臨也は再び深く溜め息。

他の人から見れば、チョコがもらえないから、などと思われるかもしれないが、生憎臨也には取り巻きすらいる。
去年も、両手だけでは数えられない程度のチョコはもらっているわけだ。

容姿端麗。眉目秀麗。見目麗しき好青年。臨也はまさにこの真ん中を闊歩している。
そんな臨也でも、バレンタインに悩みを抱えることもあるのだ。

シズちゃんに、チョコをあげるか、あげないか。


高校に入学してから、新羅によって知り合って、キリキリとする胸の感覚に気がついた。
それが恋心だと気づくのに時間はかからず、心の底から吐いていたはずの「大嫌い」の言葉は、いつしか自分の気持ちを隠すための言葉になっていた。

そんなある日、唐突に静雄に告白される。
喧嘩の最中、片手に地ならしを持ったまま、極自然に。
勿論断る理由も無く、そこから今の関係が始まった。


静雄は甘いものが好き。
だから、きっとチョコレートをあげれば喜ぶだろう。
でも、自分が素直にそんな乙女なことを出来ないのは重々承知している。告白されなければ、付き合うことも無かった。

本日何度目かの溜め息を吐いて、臨也は机に突っ伏した。



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