Novel2

□ゆめ ゆめ
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お前は、綺麗に笑う。

漆黒の黒髪の下
長い睫毛に縁取られた、澱みの無い紅を細めて
薄い唇で綺麗な弧を描いて
眩しい光を帯びて、微笑う。
でも、何処かもの寂しく、微笑う。

手を伸ばして、伸ばして、
触れる寸前。





目が覚める。


あの日から、1年が経った。
気がつけば過ぎていたような、酷く長かったような。
そんな、変わらない喧騒の池袋を、歩く。

あの日。
臨也が笑った日。
好きだよ、と囁いた日。
そして、
目の前から居なくなった日。



そう、唐突だった。
いつものように喧嘩をして、あの日、追いかけっこの最中に走り込んだ路地裏。

「逃がさねぇぞ、手前」

標識を構えたまま臨也ににじりよる。
臨也は、普段と変わらずナイフを構えていた。

…なのに。
カラン、と、冷たい路地に金属音が響く。
――そう、突然、臨也はナイフを投げ捨てた。

不意を突かれて止まった静雄へ、臨也は唐突に笑いかける。
綺麗な、まるで光を纏うような笑顔で。

初めて、見た。
笑顔は綺麗だと言うけれど、その笑顔は綺麗を通り越した、眩しい光のようで。

臨也は、囁くように言葉を紡いだ。


「好きだよ、シズちゃん」


「…は?」

予想外。まさにそれしか思い付かないような台詞に、静雄は固まった。
好き、って、何が、誰が、どうして、なんで。

呆気にとられている静雄へ、臨也は歩み寄った。
下から見上げてくる彼の瞳は、透き通るような赤。
赤は、楽しそうに瞬く。

「シズちゃんは?
スキ?キライ?」

子供のように、無邪気に彼は問いかける。
静雄は、震える唇で呟いた。
…それは、今思えば逃げだったのかもしれない。


「…わかんねぇ……」


臨也は、笑う。
綺麗に、何処かせつなく。


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