Novel2

□「また会えたら。」
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「冷蔵庫なんて持ち上げられるの?ちっちゃいやつ?」

「違う、でかいやつ」

何もかも非力な自分とは違うのだろう、こいつは。

「お前はどうして入院してるんだよ」

「…風邪ひいたから」

彼に比べたら、自分の理由が嫌にちっぽけなものに思えた。

きっと俺は嫌な奴なんだ。
本当か嘘かも分からないことに、こんなにも彼を敵視しようとしているなんて。

もやもやと考えている臨也。
彼は、気にしたように口を開いた。

「具合悪いのか?」

「…悪くない」

不機嫌を滲ませた声で言った臨也に対し、彼はやっぱり心配しているようで。
俯きかけた臨也を覗きこんで言った。


「早く元気になれよ」


――つい先刻まで、回りは誰も気に入らないとでも言うような顔をしていたくせに。
何で、まだ会って数分の俺に、そんなに心配そうな顔をするんだろう。

「君もね」

臨也は笑って見せた。



それからも何かしら話して、
話題も無くなってきたところで臨也は帰ることにした。

「じゃあ、ばいばい」

踵を返して手を振ろうとした臨也。

「待てよっ」

唐突に呼び止められ、臨也は振り返る。
会ってすぐよりも幾分表情が柔らかくなった彼は、臨也に言った。

「名前、教えろよ!」

臨也はニコリと笑う。

「秘密。
俺も君の名前知らないからね。
もしいつかまた俺と君が会うことがあったら、その時に名前教えるから、君も名前教えてよ」

そのいつかなんて、来るかわからないけどね。
そう付け足した臨也は、再び歩き出し、病室を出た。



「へいわじま、しずお」

次の日。
母の迎えの車の中で臨也は、、プレートに書いてあった名前を反芻していた。
自分でもセコいとは思ったが、見てしまって覚えたら仕方ない。
それなら、逆に忘れないようにしよう。
俺も静雄も大人になって、誰か分からないくらい変わってしまった時でも、分かるように。
例え、来ると決まった未来じゃなくても。




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