Novel2

□「また会えたら。」
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来神学園の屋上。
授業をさぼってのんびりしているとき。

――ふと、臨也は思い出した。

あれは…そう、もう随分と前、
俺がまだ歪んでいなかった、小学校5年の頃だった。



幼い頃は身体が弱かった臨也は、風邪を拗らして入院していた。
他の子より大人しくも好奇心旺盛だった臨也は、
その日も病院内を散策していた。

風邪も良くなり、合併症を引き起こすこともなく、明日には退院できる。
しかし、見舞いに来た人と入院している人との言葉の応酬は、病院内でしか聞けないのだ。
と言うわけで、今日中に病院内を色々回りたかった。

人の会話や、反応を見るのが好き。
自分でもなかなか変な趣味だとは思っているが、誰に咎められるわけでもない。
入っちゃ駄目と言われたら、
「ごめんなさい、わかりませんでした」
で済むのは小学生の内だけだとも何となく分かる。
小学生っていうのは、大人が思うより多感なのだ。


臨也の病室の2階上。
新しく、臨也と同い年の患者が入ったと看護師に聞き、暇潰しを兼ねて来てみた。
扉の外から覗いてみれば、
腕に包帯を巻いた少年が、何もかもが気に入らなさげな表情でぼんやりしていた。
愛想悪そう、なんて思って見ていれば。

ぱちり、と目が合った。
微かにふわふわとした髪が揺れて、臨也の姿に不思議がったように首を傾げる。

「お前誰だ?」

無視されるかと思っていた分、相手方から話しかけられるなんて意外。
臨也は素直に彼に歩み寄る。
幼い茶色の瞳に臨也が映った。

「病院に入院してるんだよ、同い年なんだよ俺と君」

あえて名前を言わずにおいた臨也は、再び名前を問おうとした彼の声を遮って口を開く。

「君はどうして入院してるの?」

彼は、そんな臨也の態度に苛立ったのか眉根を寄せたものの、端的ながら素直にその問い掛けに答えた。

「冷蔵庫持ち上げたら、骨が折れた」

…冷蔵庫?
信じがたいような返答に、臨也は思わず目を丸くする。
自慢じゃないが相手が嘘を吐いたら大抵は見破れるのだが、
彼は嘘を吐いたふうでもない。

「…冷蔵庫を持ち上げたの?」

「そう言っただろ」

不機嫌そうな顔で返され、臨也は言葉の真偽を確かめるのは止めた。
このまま問いかけても、きっと機嫌を損ねるだけだ。
事実だとは信じがたいが、嘘と断定するのも何だか惜しい。
もし本当だったら、きっと誰にでも頼られるヒーローなんだろう。
何だか周りが気に食わなさそうな顔をしているけれど。
…羨ましいのと同時、妬ましくも思えた。


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