Novel2

□甘色プレリュード
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臨也が自宅に帰る頃には、静雄は既に帰宅していた。
作り置きしておいた料理を温め終わった静雄は、皿を運びながら「遅かったな」と一言。
ごめんね、と苦笑しつつ謝りながら、此処にもう一人いたら、なんて想像して。

食卓に向かい合って座り、静雄が食べ始めたとき、
臨也はどきどきと高鳴る胸に緊張を煽られながら、口を開いた。

「シズちゃん」

「ん?」

静雄はもぐもぐと口を動かしながら、僅かに赤くなっている臨也に気がついて顔を上げる。
臨也は机に乗せた手をきゅっと握りしめると、言った。


「シズちゃんと、俺の、
…こどもが欲しいっ」


一瞬の沈黙。
静雄は噎せた。

「え、ちょっと、大丈夫!?」

焦りつつ、噎せる静雄の背中を擦る。
1分後ようやく落ち着いた静雄は、臨也を見た。

「…こども?」

「…こども……。」

小さく、不安げに頷いた臨也に、静雄は再び「こども」と反芻する。
そして、言葉の咀嚼をし終えたのだろう静雄は、
緊張したような表情を浮かべたままの臨也へ、笑いかけた。

「こども、欲しいな」

ほっとした瞬間、嬉しくなって。
にこ、と満面の笑みを浮かべれば、抱き締められた。



夜中。
ひとしきりの行為を終えた二人は、一つのベッドに潜っていた。

「痛くないか?」

「ん、大丈夫だよ」

くしゃり、と頭を撫でられ、小さく微笑む。
子供出来るかな、と問い掛ければ、出来るまで頑張るに決まってるだろ、なんて言われた。

「じゃあさ、どんな子が生まれると思う?」

臨也の楽しげな声に、静雄は眉をしかめて見せる。

「俺似じゃなくて、手前みたいに鬱陶しくねぇ奴」

「酷いなぁ、シズちゃんは…
俺としてはシズちゃん似が良いなぁ。もうちょっと、人間味が欲しいけど」

そう言い返せば、「悪かったな」と毒づかれる。
でもそこには苛立ちも挑発も有りはしなくて、
優しい、甘い空気が満ちていた。



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