Novel2

□唇の関係
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「シズちゃんは、俺のこと好きなの?」

…唐突な質問に、静雄はぱちくりと瞬きをした。

シワのついたシーツ。
ベッドの上で寝返りを打てば、ギシリ、と軋んだ音が響く。
その上――
一糸乱れぬ姿で、臨也は泣きそうな顔をしていた。



…と言うのも。
臨也は今日、静雄の家に泊まりに来ていた。

付き合って半年。
もう何をしていてもおかしくない、はず。
…なのに、キス以上の進展は、まるでゼロ。
ディープキスまでは、簡単に…というより、寧ろシズちゃんの方が積極的だったのに。

「キスの次は、決まってるだろ…」

臨也は、静雄と会ってキスをする度に、別れた後に唇を尖らせる。
キスだけ。だけ。
…それだけ。
それ以上は、絶対にしてこないのだ。
『自分から行けば良いだろ、男なんだから。』
そう言って此方を睨む自分。
『恥ずかしいから無理』
そう呟いて、俯く自分。

本当に、付き合っているのだろうか――
最近は、それすら不安になる。
彼が口下手なのは百も承知だから、無理に言葉を求めようとはしないけれど。

キスしかする気にならない?

キス以上はしたくない?

頭の中をぐるぐると回る言葉は、どう転がっても良い方には行かなくて。

…だから、シズちゃんの気持ちを探るために。

「シズちゃんの家、泊まっていい?」

…そう、持ちかけた。
最初は拒否されて、でも負けたくなくて、駄々を捏ねて。
また断られたけれど、どうやら俺が泣きそうな顔でもしていたのか、
シズちゃんは溜め息を吐きながらも、了承してくれた。



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