Novel2

□※咄咄怪事
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あり得ない。馬鹿げてる。
そんな色を滲ませて静雄を睨み付けると、静雄はニヤリと笑った。

「お祝いに何かするって言ったのは手前だろ。
それ穿かないなら帰れ」

「…っ、なにそれ……」

ずるい。
久し振りに会った上に記念日なのに、
こんなの俺が素直に帰れないのを分かってて。

「死ね、馬鹿、
俺が穿いても何も得しないだろ…っ」

「それは穿かなきゃ分からねぇだろ?
ほら、穿く気ないなら帰れよ」

静雄は不敵に笑って、玄関を指差した。

…まさか、俺に帰って欲しいとか――?
ふと、そんな不安が胸を過った。
こんなの、大抵の男は拒否するに決まっている。
本当は早く帰って欲しくて、だからこんな風に追い出そうとしているのだろうか…。

胸が、きゅう、となった。
恥ずかしい。
でも、逃げたくない。
シズちゃんが嫌でも、一緒にいたい。

臨也は覚悟を決めると、そのパッケージを破った。
向こう側の透けるような生地を握りしめて、静雄を睨む。

「穿けば、いいんだろ…っ」

静雄は一瞬意外そうに目を丸くしたものの…
すぐに、口角をつり上げた。

「下着も脱げよ」

本当は、全力で拒否したかった。
でも試されているような気分になって、静雄に負けるのは気にくわなくて。

「……わかった」

僅かに震えた声は歩きながら喋ったせいにして、トイレへ向かった。



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