Novel2

□唇までの距離
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臨也は、静雄の背中を見つめて溜め息を吐いた。

大好きな、大好きなシズちゃん。
そして、彼にとっても、
大好きな臨也、のはずなんだけれど。

付き合い始めて1ヶ月。
恋人、という空気にならなくたって、抱き合いもしたし、キスもした。

そう、キスは、したのだ。

…なのに、ここ最近…否、2週間前から、唇を重ねていない。
理由は分からない。
唐突に、キスを避けるようになった。
しかも、突然俺から逃げるように、1歩前を歩くようにもなった。
以前なら、時によっては二人きりになった途端にキスを強いてきたくせに。

…確かに、シズちゃんは分からない。
突然予想もしない行動に出たり、不意打ちみたいに何かを言ってくることもある。

でも、理解出来る限りは理解しているつもりだ。
嫌いなものは、馬鹿すぎるくらいに顔を見れば分かる。
甘いものを食べている時の顔は、いつもより嬉しそう。
それに、俺が他の奴と喋ると、機嫌が悪くなる。
その上、やきもちなのか知らないが、突然キスをしてくることも多くなる。

――そう、キスが多くなる、んだ。

押して駄目なら引いてみろ、とは言うもので。
そう、押すばかりじゃなくて、引いてみるのも選択肢のひとつなのだ。

一歩前を歩く静雄。
僅かな期待と不安を抱きながらも、臨也は決めた。



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