Novel2

□※風邪ひきと寂しがり
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近づいた顔。
瞼を閉ざす暇もなく重ねられた体温。
その柔らかさに息を飲むと同時に唇を割った静雄の舌は、戸惑いを隠せない臨也の舌を絡め取った。

「ん…ふ、ぅ……はぁ、ンっ…」

混ざった唾液が艶かしい音をたてる。重なり合う舌の感触の全てが臨也の意識をかき混ぜて、頭がぼんやりとした。
熱のせいか、ぐらぐらとする頭はいつも以上の速度で思考能力を低下させていく。
触れているのは唇なのに、身体はじわじわと熱を増して鼓動を加速させる。
唇が離れる頃には、臨也の身体は自分だけでは支えられないほどになっていた。
気づかぬ間に腰を捕らえていた腕に助けられながら静雄の胸に埋まるようにすがれば、予想以上に早い鼓動が聞こえてきて。

「シズちゃん、わかって、る?俺病人、なんだけどな、」

「…だからだろ」

顔をしかめながら紡がれた声に、どういうことだと尋ねるように静雄を見れば、静雄は顔を赤らめてそっぽを向く。

「こっち見るな」

「はぁ?」

訝しげな目で静雄を見れば、唇を噛み締めて躊躇いつつも彼は口を開いた。

「風邪、引いてるだろ」

「?、うん」


「顔赤いし、目潤んでるし、誘ってるようにしか見えねぇんだよ」


は、と声が漏れた。病人相手に盛るなんて、どんな神経をしているんだ、と思ったものの、呆れて物も言えない。
だから手前が悪い、と責任転嫁をはかるかのごとく紡がれた言葉に、臨也は唇を結んだ。
本当に、非常識だと思う。
…俺も、シズちゃんも。

「じゃあ、しようよ」

僅かに恥じながら紡いだ言葉に、静雄は一瞬停止し、それから驚きの声をあげる。更に赤みの増した頬に、臨也まで羞恥を煽られながらも静雄を見やった。

「風邪引いてるって言ったのは手前だろ!」

「キスしておいて、今更そんなこと言うの?ちゃんと責任とってよ」

「風邪だからキスで止めようって思ってやってんだよ、だから」

そんなのシズちゃんの勝手だ。俺はキスで止めてなんて言ってない。
相手を高ぶらせることをしておいて、気を遣うなんて。そんなに俺を好きにさせたいのか。

「ずるい」

呟いて、静雄を見上げれば。

身体が押され、ベッドに倒れ込んだ。
見上げる必要もない距離に、静雄の赤く染まった顔。どきん、と一際跳ね上がった鼓動に、臨也は唇を噛み締めた。
静雄は、僅かに上擦った低い声で囁く。

「誘ったのは手前だからな。
…風邪だからって容赦しねぇぞ」

ふ、と笑みが零れた。
これが静雄の愛情なら、拒否する理由なんて俺には存在しないのだから。

「上等だよ」



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