*CALL ME, CALL…

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静雄は、有様に思考が停止した。

数人の護衛らしき人たちは、干渉することも無く、比較的若い、髪を白く染めた男が、床に膝をつけたような状態で居た。
下半身を、出した状態で。

その下には、酷く見慣れた、鬱陶しい奴が居た。

手首を紐で纏められ、ぐったりと床にうつ伏せて倒れていた。
剥がされた血塗れた包帯やガーゼが散らばっておりギプスのみが唯一支障なく付いているだけで、上着もズボンも後ろがぱっくりと開いて、血やら精液やらで薄暗い電灯に照らされベタベタと光っていた。


「お前は…平和島静雄、ですね?」

男が、鋭い眼をぎらつかせながら、立ち上がった。
平然と、ズボンや下着を直しながら、言う。

「折原さんと平和島静雄は知り合いなんでしょうかね?」

「……」

静雄は声が出ずに立ち竦んだままだった。
理解したくない、と頭が思考を巡らせることを拒む。

後ろでは、追いついてきたトムがその状態を見て言葉を失っていた。
トムは、無意識に声を漏らす。

「折…原?」

途端、爆発したように、静雄がその男に殴りかかった。
彼の護衛が、4人がかりで止める。が、そんなものが今の静雄に通じるはずも無い。
筋肉質の護衛をいとも容易く振りほどく。

バキッ
という音と共に、臨也を敷いていた男がぶっ飛んだ。
壁にぶつかり、止まる。

静雄は、更に殴る。
殴って、殴って、殴って殴って殴って、殴って、殴って、
男が霞める意識の中、言った。

「折原さんは、いい声で啼いてくれましたよ」

バキン!

一際大きな音を立てて、最後の一撃が喰らわされた。
死んではいないかもしれないが、間違いなく顔は戻ってこないだろう。


静雄は、ゆっくりと振り返る。
と、目をぼんやりと開いた臨也が居た。

「シ…ズ、ちゃん?」

夢現のように、臨也が呟く。
駆け寄れもせずに、臨也を見下ろした静雄。
トムが、意識の朦朧としている臨也を背に抱えると、置いてあった臨也の上着を被せ、事務所から出て、近場の臨也のマンションへ走った。

その間中、ただひたすら啜り泣く声が、体をトムの背に埋めた臨也から漏れ続けていたのを、静雄は聞いていた。



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