*CALL ME, CALL…

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折原臨也は、情報屋だ。
勿論、情報屋の信念として、情報の出所は秘密。
永遠の21歳…というつもりは無いが、風貌が大きく変わらないうちは半永久的に21歳。
若干幼く見える顔付きのお陰か、疑われたことは無い。



そんな臨也は仕事を終え、池袋の町をいつものように歩いていた。
彼にとって、常に危険を孕んでいる行為であることは承知の上。

ハブといえばマングース。
犬といえば猿。
所謂、天敵。
平和島静雄と折原臨也は、高校からの宿敵であった。それはもう、前世でも天敵だったのでは、と思うくらいの。
最も、入学早々最初に吹っ掛けたのは俺だったっけか…。
そんなことを考えながら、街中を闊歩していた時だった。

噂をすればなんとやら。
少し遠く、距離は10メートルもない。
人ごみの中に、天敵を発見した。

「やっば」

あちらの視線も此方に向く。
眉根が寄り、明らかに臨也を見つけた顔になった。
面倒くさいが、此処まで来るともう避けられない。
次からの展開を考えながら、静雄の一つの動作も見逃さないように目を見張る。

静雄は、いつものように――…


「あ…れ?」

どうして?
なんで?
あれ?

虚を突かれた気分になり、臨也は眼をぱちくりとさせながら、数秒突っ立ったままになった。

いつもなら、物凄い形相で臨也やらノミ蟲やら怒鳴りながら此方に走ってくる、又は何かを投げつけてくる、のに。
今日は、そのまま踵を返して走り去ってしまったのだ。
あの単細胞が何か秘策を考えているとも思えない。
何が起きたのか、全くもって理解できないまま、妙な空笑いだけが口から零れる。

「は…ははは…何、これ」

呟いてから、自分を今の状況に順応させることにした。

ラッキーじゃないか。
これなら仕事も邪魔されないし、無駄な労力も使う必要も無いし。
何にしろ、今日はいい日だ。
シズちゃんが大人しかったのだから。
だから、
だから…


「何動揺してんだ、俺」

予測不可能な事態に出くわすと、人は簡単には頭の整理ができない。
臨也はそういうことにして、思考を遮断した。




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