*爪立恋歌

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「今日からお世話になります」

臨也は、呆気にとられている静雄にニコリと笑いかけ、頭を下げた。



――事の発端は、つい十数日前。
あの、宿舎に文を届けに行った時から、始まっていた。

芸者や遊女は、前借金を払えば、商売から身を引かせることができる。
あの時の文は、そのことに関することだったらしい。
会話の最中、臨也が呼ばれたのはそのことだったということだ。


「静雄もいいだろ?」

「は、い、まぁ…」

四木は、静雄の引き攣ったような声は気にすることもなく、隣に立たせた臨也の頭をくしゃりと撫でた。

じくり、と胸が傷口を突かれたように痛んだ。




臨也を見ていると、イライラする。
誰かと話をしていたりすると、尚更。
訳が解らない。
確かに、自分が気が短い。
でも、自分に関係の無いことや、かなり気に入らないことじゃなければ、大抵抑えられた。
臨也が誰と話をしていようと、何をしていようと、自分は関係の無いことではないか。
なのに、どうして。

「うぜぇ…」

自分が。臨也が。





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