*爪立恋歌

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あの日歌舞伎を観に行ってから、もう1ヶ月ほど経つ。
店も客が増え、安定した売り上げを出していた。

…寂しい、などとは思わないが、
会いたい、とは思う。


「静雄、ちょっと付き合え」

「はい?」

店先で警備をしながらぼんやりと思案していると、不意に四木に呼ばれた。
閉店し、明日の準備に取り掛かっている店を出て行く四木について行きながら、何処に行くのか問い掛ける。

「ああ、この前の若衆歌舞伎を観に行くんだよ、注文の品を届ける序でにな」

言われて、四木の手に小包があることに気がつき、直ぐに代わりに持った。

なんだか、わくわくしてしまう。
また、彼を観られるかもしれない。
喋ることが出来るとは限らないが、観ていられるだけでも十分だった。

「静雄も観てえだろ?」

「ハイ」

静雄は、明るく返事をした。




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