*アイタイ。

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久しぶりの仕事。
静雄は、昼の休憩にコンビニに立ち寄っていた。
上司のトムと別の味の飲み物を買って互いに飲み合いながら、次の行き先の確認をしていた。

ふと携帯が気になり、画面を見る。
と、メールが一件。
まさか臨也なんじゃ、と思いながら、急いで送信先を見た。
…静雄は、胸を撫で下ろす。
弟である平和島幽、もとい羽島幽平の活動情報を配信するメールマガジンだった。
どうやら、舞台出演が決まったらしい。

静雄は満足げに携帯を閉じて、再び飲み比べに入った。



「よし、じゃあ次行くか」

飲み終わったカップを捨て、静雄はトムと歩き出した。


…と、前方に見慣れたワゴンを見付ける。
門田たちか、と思いながら歩くが、そのワゴンは走り去るどころか静雄へ近付いてきた。

直ぐ隣についたかと思えば、後部座席の窓が開き、妙に良い笑顔の狩沢が頭を出し。
開口一番、とんでもない事を口にする。

「シズシズ、イザイザとデキてるって本当?」

唐突に言われた言葉に、静雄は一時停止した。
違わない。本当。
どっからそんな情報を知ったんだ…?

一人迷う静雄を他所に「どうなの!?」と連呼し続ける狩沢を遊馬崎が宥め始める。
…と、不意に他の声に名前を呼ばれ、その声の方へ顔を向けた。

「門田か」

「ああ」

ひらり、と手を振り交わし、狩沢から逃れるように静雄が歩き出そうとした時だ。

「あ、静雄、臨也どうしたか知ってるか?」

突然門田に問い掛けられ、思わず止まった。

「家にいるはず、だけど…」

それだけの言葉に増長する不安に潰されそうになりながら、静雄はどうにかそう答える。
門田は、そうか、と返すと、携帯を取り出した。

「メール来たんだけど、明らかにおかしくてな」

そう言って門田が見せた文面は、確かにおかしく。
以前していたメールなのか、本文が入っているメール。
その、なんの変哲もないメールを変えているのは、文の初めの言葉。

『たすけ』

「かなり急いで打ったのか解らねぇけど、明らかに何か起こったんだろうな…本文すら消してないってことは」


「ちょっと、シズシズ!?答えてよ!」

「静雄!?」

静雄は、唐突に走り出した。
数歩走り、トムの呼び止める声に振り返ると「早退したって社長に言っておいてください」と言って、あっという間に角へ消えた。



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