*ONE DAY, ONLY DAY

□…Looker
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マグカップを片手に、青年は小さく笑う。

午後5時前。
きっともう少しで、彼女も帰ってくることだろう。
大好きで大好きで…どんな言葉でも言い表せないくらい愛している、可愛い彼女。

そんな彼女がデザインされたオリジナルのマグカップに入ったコーヒーを呷り、レンズの奥の瞼を閉じる。


きっと今頃、
彼女の友達の園原杏里は、友人の竜ヶ峰帝人と下校している頃。
今日荷物を渡した紀田正臣は、一緒に居なくなった彼女と過ごしている頃。
高校からの仲の平和島静雄と折原臨也は、喧嘩をしている頃。
他にも、
門田京平はワゴンに同乗している個性的な彼らと談笑しているだろうし、
静雄の弟の平和島幽はテレビ番組の収録をしているだろう。
露西亜寿司の店員、サイモン・ブレジネフは、片言の日本語で客寄せをしているだろうし、
変態と言うに相応しい父、岸谷森厳はまた訳のわからない実験でもしているのだろう。
――流石に四木さんは知り得ないけれど。

どれも、この池袋から始まった日常。
僕には干渉し得ない、眩しいくらいの日常だ。
そんな、僕が存在するには畏れ多いような日常に居られることを、誇りに思う。

だからせめて、傍観者としてこの街を愛そうと思う。

…あの情報屋とは、勿論違うけれど。
愛すべき首なしライダーの隣で、時には策士に操られながら、この街を見ていよう。



ガチャリ。

玄関に響いた音に、傍観者は嬉しげに立ち上がった。
今しがた帰ってきた首なしライダーを出迎えるために、玄関へ跳ねるように歩いていく。


「おかえり、セルティ!」


――これが、僕の幸せだ。






END
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