*ONE DAY, ONLY DAY

□Daily.MASAOMI KIDA
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「正臣、噴水綺麗だね」

隣から、楽しそうな声が響く。
正臣は、彼女の視線の先を見て相槌をうちながらも、僅かに眉をしかめた。


彼女、三ヶ島沙樹と二人きりで池袋を出てから、早数ヵ月。
正臣は、用があって池袋近辺の街に来ていた。


3日前、折原臨也から電話がかかってきた。
わざと、沙樹に電話をかけたのだろう。
正臣は電話をする沙樹の隣で、内容を聞いていた。

「はい、じゃあその荷物は届くんですか?」

『あぁ、そうそう。
サプライズ、ってことで、知り合いの運び屋に頼んでおいたから、取りに行ってもらいたいんだよね』

…正臣は、この折原臨也という人物を好きではない。出来れば関わりたくない。
でも、関わらなくてはいけない。
「嫌いだから」、そんな野暮な私情で繋がりを絶つことが出来ないことくらい、分かっている。
…分かったつもりでいる、かもしれないのだけれど。

「わかりました、じゃあ」

正臣が思考を巡らせている間に、沙樹は通話を終えたらしい。
携帯を机に置いた沙樹は、正臣に内容を話し出した。

「臨也さんの知り合いの運び屋さんが、荷物を届けに来るんだって。
受け取ったら、頼まれた所まで直行して、って。
細かい場所は当日また電話してくれるみたいだけど――
楽しみにしてて、って言ってたから、何か楽しみだなぁ」

素直な沙樹は、ふふ、と微笑みながら、臨也絡みということに浮かない顔をしている正臣の顔を覗き込んだ。
丸い瞳に自身の腐ったような顔が映り込む。

「本当に、臨也さんのこと好きじゃないね、正臣って。
まぁ、仕方ないのかもしれないけど」

「…まぁな」

言葉を濁しつつ視線を逸らすと、沙樹は再び笑みを溢しながら、「優しいんだね、正臣は」と呟いた。
何処が、そう言おうとすれば、沙樹が先に口を開く。

「嫌いなら、嫌いって言っちゃえばいいのに。
私なら、そうするなぁ」

「…それは、優しさじゃねぇだろ」

正臣が毛嫌いしているのは、臨也だって気がついているに決まっている。
ハッキリさせないことなど、
良く言えば誰にでも優しいのだが、悪く言えば答えを先延ばしにしているだけなのだから。
沙樹も、それを分かっている。

端目に沙樹を見れば、全てを見透かされそうな澄んだ瞳が、正臣を見詰めていた。



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