*ONE DAY, ONLY DAY
□Daily.CELTY STURLUSON
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「場所はここ。分からなかったらこのメモを見直してね。
じゃあ、いってらっしゃい」
セルティ・ストゥルルソンは、今しがた彼女を見送った眼鏡の優男と、この家に暮らしている。
彼、岸谷新羅は自分をれっきとした女として見ていて、愛していると豪語する。
人間とはかけ離れ、浮世離れした私、セルティ・ストゥルルソンを愛している、変わった人間だ。
…おっと、私の説明が不十分だった。
死期が近づいた者へ死を告げに行き、叩かれた扉を開けば最後、バケツ一杯の血を浴びせられる。
自らの首を抱え、これまた首のない馬に乗っている女の妖精、デュラハン。
それが、セルティ・ストゥルルソン、自分だ。
しかし、私にはその時の記憶が無い。
気がついたときにはその腕には首はなく、
自分がセルティ・ストゥルルソンであること、
隣にいた馬が、自分の大切な首なし馬であることしか、覚えていなかった。
デュラハンとしての記憶を持っているであろう首を求めてこの日本までやってきたのは、もう随分と前だ。
そして、首を探しつつこの岸谷邸で世話になりながら運び屋という仕事をするうちに、
拠点の池袋で、首なしライダーとして有名になった。
…しかし今は首などもう、どうでもいい。
私には、新羅がいてくれるのだから。
バイクで走行しながらも、自分の言った言葉に恥ずかしくなりぶんぶんと首を横に振れば、
まるで飼い主の調子でも気にするように、バイクのエンジンが小さく鳴る。
優しい愛馬を撫でながら、
新羅の指示のあった場所まで、頼まれた荷物を届けに走った。
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