*うた こい
□『ひとつ、溜め息を吐いた。』
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「シズちゃんにも、ねぇ…」
「?」
臨也の呟きに、傍らで絵本を見ていたサイケはことりと首を傾げた。
つい先刻、新羅から電話がかかってきた。
その電話の内容は、予想しなかったわけでもないことだったのだけれど。
『でね、静雄の所にもサイケみたいなアンドロイドを送ったんだよ。
サイケとは違って、喋れる代わりに歌は一曲しか覚えてないけど』
「…やると思った」
『阻止しなかったのは臨也だよ?別に臨也に危害が加わる訳じゃないしさ。
あ、あと、津軽海峡冬景色しか歌えないから津軽って名前なんだよ』
「………」
一頻り話し終え電話を切り、今に至るのだけれど。
シズちゃんのアンドロイド、と言うことは、彼に似ているのだろうか。
それはそれで面白い。…寧ろ、俺が欲しいくらい。
苦笑を溢して、臨也は立ち上がる。
付いてこようと立ち上がったサイケに、留守番してて、と言えば、サイケは拗ねた表情を浮かべた。
「俺の喧嘩相手のシズちゃんの家にも、サイケみたいな機械が来たんだよ。
津軽、って言うんだって」
――すると、サイケの目がこれまでに無いくらい爛々と輝いた。その意味くらい、直ぐに想像がつく。
「津軽くんと会いたい?」
「!、っ」
ぱあ、と明るさを増したサイケの顔。こくこくと頷く姿は、やはり自分とは違う。
どうしたらここまで分かりやすいほど素直になるやら、と機械にはそうインプットされてるのだと知りながら思った。
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