*Eternal Love
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「おはよ、シズちゃん」
一件あった次の登校日。
臨也は、いつものように静雄に手を振ってきた。
「…おす」
静雄は、やはり何処か安心しながら挨拶を返す。
隣の席に座った臨也は、静雄のほっとしたような表情に首を傾げた。
「どうしたの、馬鹿っぽい顔して」
ふざけたように問われた言葉に眉をしかめて睨んだものの、臨也は笑みを零しながら此方から目を離さない。
問いかけたかったのは本当なのだろう、と、静雄は僅かに躊躇ったものの口を開いた。
「手前は、俺を避けねぇのか?」
臨也は、その言葉に目を丸くする。
どうして避ける必要があるの、と言いたげな顔に、嬉しいような反面、…戸惑いも、した。
「俺の近くにいたら、いきなり噛みつかれるかもしれねぇんだぞ?」
「あぁ、そうだね」
静雄の複雑な声音などまるで聞いていないかのように、しれっと答えられる。
不意を突かれた気分になりながら溜め息を吐くと、臨也は漸くその意味を理解したのか、なんだぁ、と笑った。
「俺がシズちゃんに殺されるのが怖くて避けるとでも思ってたわけ?無い無い。
だって、抑えてくれるんだろ?俺の血を吸うのは」
何処か眩しくすら見える笑顔に、静雄は何も言えなくなる。
…確かにそうなのだが、面と向かって言われると最早呆れすら出てくる。
「…いつまでも抑えてられると思うなよ」
低く呟いたものの、臨也は「うん」と頷きながら何時ものように笑った。
あの一件以来、人の血を吸うのが怖くなった。
実際、あれから人を襲っていない。
今までも、人を殺して自分が生きる、というのが好きではなかったけれど。
確かに、吸わなくても不老不死のため、空腹に苦しむだけで死に至ることはない。
でも、勿論空腹になれば、人間が食物を欲するように、体が血を欲するわけだ。
大切な人のために血を吸うのを堪えたものの、空腹に負けてその人を殺してしまった、という話も聞いたことがある。
耐えしのげば血を飲まずにいられる身体になるらしいが、相当な忍耐が必要らしい。
…だから、彼が自分を恐れずに傍にいてくれるのは嬉しくもあり、怖くもあった。
何れ、空腹に負けて殺してしまうのではないか。そんな不安感が、常について回る。
怒りすら堪えられない自分が、いつまでも食欲を堪えられるとも思えない。
友達としても、…彼の心とは違う意味としても、臨也は大切だった。
だから、怖い。
彼の信頼を裏切る俺が。
彼の傍にいることが。
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