Novel1

□※二律背反同盟
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「とりあえず一発殴らせろ。
テメエのその傷が治った後にも寂しくないように鼻の骨へし折ってやる」

「物騒なこと言わないでよ、シズちゃんたら」

あはは、と嫌味ったらしく笑い、そろそろ逃げようか、と、
一瞬、ほんの一瞬、目を離した隙、その隙に。


ガシッ

「!?」

臨也は何事かと驚いて、何かに締め付けられた感覚のある腕を見ると、
静雄にがっしりと掴まれていた。
確認した途端、体が半ば引き摺られるように引っ張られた。

「シズちゃん?何してるの?」

全く予測すらしなかった状況に焦りを覚えながら、臨也は静雄に問い掛ける。
が、静雄は何も言わずに臨也を引いた。
とりあえず、今は暴力を振り回す気は無いらしい。
仕方無しに、臨也は静雄についていくことにした。




着いた先は、あの公園だった。
最近の子供はテレビゲームや携帯電話などの電子機器に洗脳されているのでは、と思うくらいに、
相も変わらず閑散とした、人一人といない公園。

漸く手を離された臨也は、背にあるトイレの外壁にもたれて、掴まれて痛くなった腕を摩る。

「痛いんだけど」

「テメエの痛覚なんざどうでも良いんだよ」

静雄はそう言い、
喧嘩腰な瞳で拳を振り上げた。

直ぐに体勢を低くして、臨也はその拳を避ける。
風を巻き起こして、拳は臨也の頭上を通過し、トイレの壁を抉った。
拳を上手く避けながら、臨也は問い掛ける。

「それにしても、なんで、こんなところに、連れて来たの?」

「テメエのことだから、人込みに紛れようとする気がしたからだよ」

「…シズちゃん、要らない勘が鋭いんだから」

完全に見破られていたらしい。
だからこんな閑散とした公園に連れて来たわけだ。
ここなら、もし逃げても、遊具やベンチなど、静雄にとっては投げられる物もあるし、どんなに投げても他人には当たらない。

「とりあえず、一発殴らせろ。
イライラしてるからよぉ」

静雄のドスの効いた声と共に、拳が引かれる。
軽いフットワークで、繰り出された強烈なパンチを避けた臨也は、そのまま一歩前へ踏み出した。


「暴力なんて良くないよ、シズちゃん。
もっと可愛いことにしてよ。
例えば――」

臨也はそういうと、
静雄の唇を唇で塞いだ。
彼の動きがぴくんと止まった。
一瞬のキス。
唇をくっつけただけの、幼稚園児でもできるような、愛らしいキス。
唇を話し、臨也は静雄を上目に見る。

「こういうこととか」

ポカンとして臨也を見た静雄。
臨也はケラケラと笑い、詰るような口調で言う。

「この前はあんな濃厚なキスしておいて、何ぽかんとしてるの?」

一応にも、ディープキスまでした仲なのだ。
お互いが好きあっているかは、別として。



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