*Eternal Love

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「俺のこと嫌いになったの?」

いつもの凛とした声とは欠け離れた声音が、耳に届いた。
震えた弱々しい声。罵ることしか知らないような苛立たしい声とは違う、酷く切ない声。

思わず振り返れば、臨也は顔を歪めていた。
いつもの整った顔ではない、泣きそうな顔に。

「鬱陶しいなら、面と向かって言えば良いだろ…
なんで、そんな何も言わずに避けたりするわけ…?」

予想外な展開に、思わず狼狽えた。
何と答えれば良いのか。それすら分からない。

本当のことを言えば、彼はどんな反応をするのだろう。
怒る?笑う?泣く?
「食欲が抑えられる気がしねぇから」なんて。
「好きだから傍にいるのが怖い」なんて。

何も言わず黙り込んだ静雄。
屋上を走る風は、二人の髪をなびかせながらそ知らぬ顔で逃げていく。

ひっく。風と共に耳に届いた音に臨也を見れば、俯いたその肩が震えていた。

「言ってよ…っく…
キライ、なら…言えよ…」

切ない声に、胸が締め付けられる。
どうして、なんで、そんなに俺なんかに執着するのだろう。

気がつけば、無意識に足が動いていた。
踵を返して、肩を震わせる臨也に歩み寄ると、
その肩を、きつく、抱き締めていた。

――限界だった。
こんなにも、俺を想ってくれている奴を、誰がこのまま放っておけるだろう。
好きな奴が肩を震わしていて、どうしたらこのまま立ち去れるのだろう。
俺には、無理だ。

驚きに、臨也の肩が跳ねる。
その耳元で、詰まる喉でどうにか呟いた。

「そんなわけねぇだろ」

…今思えば、男同士が抱き合っている、なんていうのは不自然だと気がつく。同時に、我に返って恥ずかしくもなる。
――でも、静雄の背中に回された細い腕を振り払うことなど、出来るはずもない。


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