□甘いものと苦いもの
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「陛下!」


「方淵か。」



休憩の為後宮へと向かっていた陛下を、私は後宮の手前の廊下で捕まえることができた。

陛下は私の声にゆっくりと振り返った。

その瞳は鋭く厳しい。

横で控えていた李順殿がどっと疲れたような顔をしていたが、今用があるのは陛下だ。

私は陛下を見据えて、言葉を紡いだ。



「陛下、本日こそお妃様の出過ぎた我が儘を咎めていただきたく思います。お時間よろしいですか??」



そう告げると少し肌寒くなった気がするが、気のせいだろう。

最近はどちらかというと暑いくらいだ。

後ろで控えている李順殿の顔が青くなっている気がするが、体調が悪いのだろうか。

後で医療室へ向かうことを進言しよう。



「お前も懲りん奴だな。」


「一臣下として陛下の御身を案じているのです。」



溜息混じりに吐き出された言葉とは裏腹に、その瞳は政務室に居るときと同じく常に厳しい陛下の瞳である。

なぜこのように常に毅然とある人があのお妃の事になるとああも寛容に振る舞っているのか。

きっと陛下はあのお妃にたぶらかされているのだ。

寵愛などという一時の幻を最大に振りかざし、陛下を振り回しているに違いない。

陛下の横で李順殿の顔色がどんどん悪くなっているので、出来るだけ早めに話しを切り上げたいのだが。

しかしこれは国家問題だ。

私は今一度言葉を紡ぐために陛下へと視線を向けたその瞬間、廊下の角からお妃様が顔を出した。

私と目があった瞬間、キッと睨んでくる。

私とお妃様の間でバリッという音が聞こえた気がしないでもない。
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