猟奇少年と純愛少女

□2
2ページ/4ページ

口実で送っていくと言ったら、北村は元々大きい目を更に大きくさせた。顔を真っ赤にして口をパクパクさせているが、どうやら言葉が出てこないらしい。

今日、何度こいつのこういう顔を見ただろう。一日にそんなに表情をクルクル変えて疲れないのだろうか。

俺が北村の表情を観察していると、北村は絞り出すような声で「ほんとに……?」と聞いてきた。それに「うん」とだけ返すと、今度は頭と両手を左右に勢いよく振りだした。

「いや、いいよ!
私が勝手について来ただけだし!!」


……まただ。

こいつ、なんでこうも面倒くさいのだろう。一緒に帰るか帰らないかの件も話がなかなか噛み合わず、無駄に時間を使ってしまった。いちいち拒否しないで、素直に受け入れやいいのに……。


「じゃあ、俺も勝手に送るだけだから」

じっと北村を見つめる。ここでこいつが拒否ったらもう知らない。勝手に行かせてもらう。

北村は顔を赤くしながら下唇を噛んで俺を見ていたが、不意に視線を下に落すと「……じゃあ、お願い……します」と呟いた。

そんな北村を見て何故かため息がでる。俺は「うん」と返し、再び歩き出した。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ