猟奇少年と純愛少女
□変化
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返事をしないということは、猫は飼ってはいないのだろうか。
それとも猫は飼ってはいるのだけれど、ただ単に返事をするのが面倒なだけなのか……。
……――あ、そういえば。
猫のことを考えた瞬間、今朝通学路で見つけたアレを思い出した。正直思い出したくなかったが、今思いつく話題がこれしか無い。想いを寄せている人にこういう話をするのもどうかと思うけど、多分、榊原君なら大丈夫。
喋ることにした。
「……榊原君。あのね。
私、朝、凄いの見ちゃったんだよね」
「……」
榊原君は無反応。ちゃんと聞いてるのか心配になったが、構わず続ける。
「それが、猫の死体なんだけど……」
榊原君が私を見た。それどころか、読んでいた本を閉じて机に置き、その上に片手を重ねると、首を軽く傾ける仕草をした。
え……、予想外の食い付き。
私は彼の視線を受け顔に熱を感じながらも、詳細を伝えるために続ける。
「気持ち悪くてあんまり近くで見れなかったんだけど、血塗れだったの」
「猫の死体なんて珍しくないよ」
「うん。そうなんだけど、アレは違った。
顔も血塗れで、多分片耳が無かった。
それに……」
「……」
榊原君は眉をひそめる。続きが気になっている様だった。でも私は、その続きがなかなか言えない。
――思い出すだけでも悍ましかった。
耳が無かったのは生きていた時からかもしれないし、血塗れなのも、交通事故で亡くなってしまったのならありうるだろう。
しかし、異質なモノがその死体にはあった。そのモノの存在で、恐ろしい事がわかってしまった。
私は恐怖心を堪え、言葉を絞り出した。
「口の中にね、
カッターナイフが刺さってたの」
教室に、チャイムが鳴り響いた。