ミカちゃん
□見せたいモノ
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コンビニの中に入り、僕は左手首に巻いた腕時計を見た。どうやら僕は約束の時間の七分前に到着出来たみたいだ。
僕は店内を見回した。
店の中には店員と親子の一組しかおらず、まだ秀介は来ていないようだった。
親子はパンが売っているコーナーで品定めをしている。厳密に言えば、子供の男の子が眉間に皺を寄せながら真剣にパンを見比べ、母親の方はその少年を微笑ましく見守っている、という感じだ。
「マサト、まだ決まらないの?」
「うーん。
どれも美味しそうなんだもん」
マサトと呼ばれた少年の返事に、母親は困ったように笑った。
僕はその母親の笑顔を見て、何故か昔の……まだ変わっていない頃のお母さんを思い出した。
優しくて、明るくて、
笑顔が絶えなかった頃の
お母さん。
僕の事を
愛してくれて、
今みたいに
憎んでいなかった頃の
お母さん。
お父さんがいた頃の、
お母さん。
……どうしてお母さんが変わってしまったのか、僕は知っている。
全て僕のせいなんだ。
お父さんが出て行ったのも、お母さんがあんなふうになったのも、全部、僕のせい。
僕がもっと頭が賢かったらよかったんだ。
僕が余計なことをしなければよかったんだ。
僕が……
僕は……
僕なんて……
僕なんて、
産まれて来なきゃよかっ
「はいストーップ!」
秀介の声が聞こえたのと同時に、僕の視界は真っ暗になった。