猟奇少年と純愛少女

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私は突き飛ばされた衝撃でよろめきながら二歩下がる。驚いて榊原君を見た。

いつもの榊原君じゃない……。
眉間に皺を寄せる彼の目はどこか落ち着きがない。両手で頭を抱え俯いていく姿は、弱々しく、小さく見えた。

あの冷静な榊原君が明らかに動揺している……。

でも、それは当然だと思う。
今までずっと、ずっと愛されてこなかったんだもん。いきなり他人にあんなことを言われても信じられるわけがない。
しかも彼は、自分の境遇を知りすぎている。きっと親が話したのだろう。自分の親にあんなことを話されたら、どれだけ辛いだろう……。

当時の榊原君を襲った悲しみは、計り知れない。


「榊原君……」


彼の肩に置こうと右手を伸ばした瞬間、温度がない言葉が私に突き刺さった。


「……北村。
やっぱり、お前の俺に対する恋愛感情は無くなるよ」


ゆっくりと顔を上げる榊原君の眼光が、ぎらりと鋭く光った。
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