猟奇少年と純愛少女

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俺が一通り話終わる頃には、北村は目に涙を溜めていた。その反応を見て、再度俺は異質な人間なんだと自覚する。
俺は当たり前のことを言っているつもりなのに、皆にとっては当たり前じゃない。異常なんだ。

北村は暫く虚ろな目をしていたが、いきなり頭を横に振ると「違う!」と叫んだ。

「何が?」

「榊原君の言ってることだよ!
違う違う!間違ってる!
榊原君は間違ってるよ!」


北村はそこまで叫びに近い声で言うと、今度は俺に言い聞かせる様に喋りだした。


「ううんと、……だってほら。
榊原君のお母さんとお父さんだって、愛してたから結婚したんでしょ?
お互い愛し合ったから、今ここに榊原君がいるんだよ」


その言葉で、昔のことを思い出した。あれは、俺がまだ小学三年生の時だった。


「違う。
北村、俺の両親は愛し合ってはいなかったよ。
結婚する前からね」


幼かった俺は常日頃から疑問に感じていた。母さんも、父さんも、にこやかに会話をしている場面を見たことが無かったからだ。テレビや友達の家で見るような暖かい家庭とは違い、お互いが他人のように接していた。それどころか、一緒の空間を過ごしている記憶が殆どない。
俺も母さんに母さんらしいことをされたことはなかったし、父さんにも父さんらしいことをされたことが無かった。


幼いながらも、家庭に入っていた大きくて冷たい亀裂の存在を、痛いほど肌で感じていた。
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