猟奇少年と純愛少女
□変化
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榊原君とメールをした次の日。朝学校に行くと既に彼は教室にいて、自分の席に座り静かに本を読んでいた。そこまでは普通。日常の風景。
しかし、いつも通りではない事が一つだけあった。私はどうしても気になったので、勇気をだして声をかけてみる事にした。
「榊原君。おはよう。
……その傷どうしたの?」
彼の顔には昨日は無かったはずの切り傷が沢山出来ていた。特に左頬にある3センチほどの二本の傷は、深いのか、赤く炎症を起こしている。どの傷も薄いかさぶたになってはいるものの、見ていて痛々しかった。
「別に。なんでもない」
榊原君は本から視線を逸らすことなく呟いた。反応が冷たくて泣きそうだ。でも、めげない。
「そっか。痛そうだね」
「今はそんなことないよ」
「……。
なにかに引っ掻かれたの?
例えば、猫とか」
「……」
榊原君は無言で本から私に視線を移した。恐ろしく冷静な目で私をじっと見上げる。
「……え?あ、当たった?」
「うん」
彼はまた本に視線を戻す。
「榊原君、猫飼ってるんだ」
「……」
無言。
会話が終わってしまった。