猟奇少年と純愛少女
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授業が終わる頃には興奮も下半身も収まっていた。まぁ所詮は魚。そこまでという感じ。
授業が終わって理科室を出ようとその寸前で誰かが俺の袖を引っ張った。
行動を阻止された事に若干イラつきながら振り返ると、そこには長い睫毛を伏せて目線を下に落とした北村が立っていた。
その後ろに、女子生徒が二人。名前は覚えていない。北村の背中をつついたり、にやにや笑いながらなにか小声で言っている。
これは不快極まりない。
「何」
「あ……のね。
さ、差し支えなければ、榊原君の……」
「何言ってるかわかんない。
声、ちっさすぎ」
「……。
だ、だから!
榊原君のメアド教えて!
……あ、い、嫌だったら別に……!」
なんだこいつ。友人をぞろぞろ引き連れて何事かと思ったら、大袈裟な。特に断る理由が思い付かなかった俺は「いいよ」と承諾した。
その瞬間、後ろにいる女子の二人の奇声。
「きゃー」だか「ひゃー」だかよくわからない甲高い声で叫びながら北村をバシバシ叩く。不意をつかれたので、俺はその声に頭を貫かれた気がした。
……え、おい。なんだコレ。
頭に響く。やめろ。
北村をそんなに殴ってどうするんだ。
しかし叩かれている当の本人は顔を真っ赤にしながら満面の笑みを浮かべていた。「もー、やめてよー」とか言ってるくせに全然嬉しそうな顔をしている。北村はマゾなのだろうか。
俺がそんな奇妙な光景を黙って見ていると、はっとしたように北村が二人をなだめ、ポケットから小さい紙を取り出した。
「これ、私のアドレス……。
暇な時にでもメール送ってね」
俺はそれを受け取り「わかった」と言うと理科室を後にした。
後ろからまた奇声が聞こえたが無視をした。