猟奇少年と純愛少女

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俺はまたのこぎりを握り直すと、今度は手前に引いた。ずっと物置に置いていたから錆びているだろうと思ったが、案外切れ味が良い。たった一回の往復で、結構な深さの切り口が出来た。

夢中になってのこぎりを動かしていると、あるところを境に血の量が多くなった。というか、飛び散った。どうやら動脈を切ったらしい。
首に太い血管、頸動脈が通っているのは知っていた。だから大量の出血も覚悟はしていたし、ビニールシートはその為の物でもあった。

……が、のこぎりを思い切り動かしすぎたのか、予想以上に血の飛び散りが激しい。自分の考えが浅はかだったせいで、俺は服も勿論だが、見事に顔面にも血を浴びることとなった。

目の辺りに付着した血は袖で拭い、口の周りのは舐めてみた。口の中に鉄の香りが広がる。
うん、予想通りの味。

俺は口の中に残っている香りを舌で転がしながら作業を続けた。


のこぎりを前に押す。

のこぎりを後ろに引く。

そしてまた前に押す。

そしてまた後ろに引く。

また前に。また後ろに。

ぐちゃ。ぬちゃ。ぐちゅ。ねちゃ……




……――がりっ。




生々しい音に、無機質な音が混じったのに気付いた。

新たな手応え。

もう一度、今度は軽くそこを擦ってみる。確かにがりがりと音がなる。明らかに肉では無い。
なんだ、もう頸椎か。
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