Short dream

□【佐伯夢】触れあう指先で
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いつもより長めのシャワーを終えたサエが、バスルームから出てきた。
身につけているのはデニムのパンツだけで、肩から掛けたタオルはその役目を果たしておらず、床にぽたぽたと水滴が落ちる。


今日の試合には余裕で勝ったし、六角も次のステップへとコマを進めた。
おじいの言う通り、目標には順調に進んでいるし、1日流れも良かった。
それなのに彼は、どこか塞ぎ込んでいる。私にしか分からない程度にほんの少しだけ。
プライドの高い人だから、その原因が何かなんて、聞いても話してはくれないんだろう。


「はい、お水」


氷を沢山入れて良く冷やした水を受け取ると、それを一気に飲み干す。
空になったグラスをお礼と共に私へ差し出して、ボスリと音を立ててソファへと身を沈めた。


「ちゃんと拭かないと風邪ひいちゃうわ」


座る彼の前に立ち、肩にかかっただけのタオルを手に取ると、パサパサと音を立てて髪を拭く。
いつもなら自分で身だしなみを整えるのに、今日は大人しく私にされるがまま。

髪の水分を吸ってしっとりとしたタオルをサイドテーブルへ置くと、彼の両手が私の腰に回される。
私の胸に凭れてくる頭を抱き締めてしばらくそのままで居ると、ふぅと小さく吐かれた彼の息。
下から私を見上げてくる顔に微笑むと、額に軽くキスをした。


「ねぇ、今日は一緒に寝てもいい?」


「、珍しいな」


「うん。そんな気分なの」




ねぇ、サエ。あなたの憂いを、私が全て引き受けることができたらいいのに。


器用なあなたは不器用に感情を押し殺すから。


あなたが泣きたい時は、私が替わりに泣いてあげる。

あなたが甘えたい時は、私が替わりに甘えてあげる。









触れ合う指先で愛を囁く
 

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