白と 悪と
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数週間が経った。
愛美は、慎也の家にある本を呼んで過ごしていた。
眺めて、と言った方が正しいのかもしれない。
慎也の家にある本は、漢字を使った文章ばかりだ。
だが、愛美にはまだ漢字なんて読めなかった。
慎也は、時々かかってくる電話に出るとすぐ出掛けた。
愛美は、電話に出ることはしない。
外に出ることもしない。
家事をやりたいと言って、簡単な料理を教えてもらった。
掃除や洗濯も教えてもらった。
愛美は、慎也が大好きになっていた。
そんな慎也が帰ってくると、必ず血の匂いがした。
他にも匂いがあると言うと、硝煙の匂いだと教えてくれた。
「しょーえん?」
「火薬を使った時に出る煙のことだ」
「かやく?」
「爆発するもの」
辞書や辞典なんてなかったから、愛美がわからないことは全て慎也に聞いた。
無愛想でにこりともしない慎也だが、仕事のこと以外は答えてくれた。
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