短 文
□それと、俺と。
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「あー!やっぱいた!」
外に出てきた馬岱の視線の先。
ぼーっと座り、紫煙を燻らせる名無。
「もぅ…」
彼が止めろと何度言っても、彼女は聞く耳を持たない。
「はい、これ」
隣に座った馬岱が差し出してきたのは、個包装の飴。
「要らない」
名無が受け取りを拒むと、袋を破いて口に無理矢理 押し込んでくる。
甘さが舌に広がるが、無視して再び煙を吸い込んだ。
飴は甘いし、煙は苦い。
この組み合わせも好ましい。
「ねぇねぇ。それと俺、どっちが好き?」
無邪気に尋ねてくる馬岱。
「馬岱くん」
迷うことなく、簡素に答える。
「だったらさ、」
彼の声音が変わる。
半分程に短くなったそれを、奪われた。
地面に落ちた衝撃で、小さな火花が弾ける。
「部屋に戻って、俺を味わってよ」
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2018.04.19